夜会VOL.18『橋の下のアルカディア』初日を待ちながら

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夜会VOL.18のタイトルが『橋の下のアルカディア』と発表され、事務局サイトが開設されたのは、7月10日のことだった。2008年の『夜物語 元祖~今晩屋~』以来6年ぶりとなる、この新作夜会について何か書かねばと思っているうちに、たちまち4ヶ月あまりが過ぎ、早くも初日2日前となってしまった。

このタイミングでブログ記事を書くのも何だか間が抜けているが、とりあえずは、(Twitter や Facebook に書いた内容も含めて) これまで考えたり調べたりしたことをまとめなおしておきたい。

まず、今回の夜会が新作であるからには、曲目のほとんどが新曲になることは間違いない。

初期の夜会 (VOL.6『シャングリラ』まで) は、既発表曲を新たな文脈の中で歌いなおすことによって、作品の新たな意味を追求してゆく「言葉の実験劇場」をコンセプトとしていたが、その時期でも、とりわけ重要な場面で、いくつかの重要な新曲が挿入されていたことは忘れ難い (夜会のテーマ曲となった「二隻の舟」自体、1989年の最初の夜会で発表された新曲でもあったのだ)

VOL.7『2/2』以降は、新作のたびに十数曲もの新曲が発表され、それらがストーリーの根幹を構成するようになったことはいうまでもない。中島みゆきの尽きることのない創造力には改めて驚くほかはないが、一方、VOL.9『2/2』以降、これまで5演目が上演された再演 (あるいは再々演) においても、やはり重要な場面でいくつかの新曲が挿入されたことは見逃せないポイントだ。

――これまでいったい、どれぐらいの数の新曲 (および既発表曲) が夜会の各演目で演奏されてきたのか。それを明らかにするため、いつもお世話になっている「中島みゆき研究所」のデータを参照させていただいた上で、データを整理したのが下記の表である (「夜会工場VOL.1」のデータも含む)

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さて、今回の『橋の下のアルカディア』では、これまでも増して多くの新曲が歌われるという情報がある――もっと具体的な曲数の情報もあるのだが、それについては「ネタバレ」をできるだけ避ける意味で、ここでは触れないでおこう。

それと、夜会VOL.18初日直前の11月12日にリリースされたニューアルバム『問題集』の収録曲中、後半の5曲が、今回の夜会で歌われるということも発表されている。上記の表にもあるように、これまでも直前リリースのアルバムからの曲が夜会で歌われたケースは何度かあるが、今回のように、そのことがあらかじめ明示的に発表されたのは初めてのことだ。

が、これらの5曲についても、私は――別の記事 にも書いたような理由で――夜会初日の舞台に接するまでは、一切聴かないでいるつもりだ――少々こだわり過ぎと思われるかもしれないが。

次に、『橋の下のアルカディア』というタイトルについて。

「アルカディア」といえば、同じく「理想郷」を意味する『シャングリラ』 (夜会VOL.6) が思い出される。が、辞書 (『リーダーズ英和辞典』) をひくと、”Shangri-La” がイギリスの作家 J.ヒルトンの小説『失われた地平線』に登場する、高度な技術を駆使した人工的な理想郷の名であったのに対して、”Arcadia” は古代ギリシアの伝承に由来する「静かで質朴な生活の営まれる田園的理想郷」を意味するようで、この2つの言葉のあいだには、かなり対照的なニュアンスがあるようだ。

もちろん、そうしたニュアンスが今回の夜会の内容に反映されているのかどうかは、実際に観てみるまでは何とも言えないのだが――

それと「橋の下」の意味についても、中島みゆき自身へのインタビュー等で、すでに多少の情報が示されている。が、これについても「ネタバレ」を避ける意味で…… (以下略)

そして、今回の夜会でおそらく最も注目されるポイントである、キャストについて。

準主役と目される中村 中は、VOL.11『ウィンター・ガーデン』での谷山浩子以来、シンガーソングライターのキャスト起用としては二人目となる。あの時は、谷山浩子が歌と演技との両面で、圧倒的な存在感を示した。

その再演のVOL.12以降は――これまでこのブログの記事でも何度か触れてきたように――キャストとサイドヴォーカルとの分業体制が確立されてきたわけだが、今回の中村 中には、おそらく久々に、歌と演技の両方という重責が課されることになるだろう。

私自身は、シンガーソングライターとして、あるいは演技者としての彼女について――幸か不幸か――ほとんど予備知識をもっていない。が、中島みゆきが (VOL.11当時の谷山浩子に比べても遥かに若い) 彼女をあえてキャストに起用したことには、十分な根拠があるはずだ。その重責を彼女が十二分に果たし、夜会の歴史に新たな1ページを開いてくれることを大いに楽しみにしたい。

もうひとりのキャスト、石田 匠については、私には中村 中以上に予備知識がない。が、この『Authentic Blue』というアルバムのトレーラーを聴く限り――少しだけ、最初期の中島みゆきを思い出させなくもない――素朴で真摯なヴォーカルとメロディが印象的だ。

中村 中と同じく、夜会には初登場となる彼が、舞台に清新な風を吹き込んでくれることを期待しよう。

ところで、上記のキャスト二人やミュージシャンの Twitter やブログをフォローし、その思いや意気込みを垣間見るのも、初日を迎える前から始まる、夜会の愉しみのひとつだ。

なかでも個人的に、以前から楽しみに読んでいるのが、ヴァイオリンの牛山玲名のブログ。  彼女の言葉からは――その演奏と同様に――ミュージシャンとしての鋭い感性の閃きと真摯な思いとがストレートに伝わってくる。

今回の夜会に触れた9月13日の記事での、

冷静に、眼を凝らして、俯瞰して。このたぎりをお届けする所存。

という言葉は、客席につく私たちもまた、目を凝らし耳を澄ませて、舞台の全容と彼女たちのたぎりを全身で受け止めなくては、という気持ちにさせてくれる。

――そのたぎりへの予感とともに、40数時間後に迫った初日の開幕を待ちたい。


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