「縁会2012~3」金沢公演と大阪公演 (1)

中島みゆきのコンサートツアー「縁会2012~3」、前の記事に書いた初日(2012年10月25日神戸公演)につづけて、12月22日の金沢公演、ついで2013年1月26日の大阪公演に行ってきた。

金沢公演――疾走感と一体感

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金沢は当初は予定外だったのだが、古くからの「歌暦ネット」の友人Kさんからの「チケットあるよ~」という誘惑に結局負けてしまい、久しぶりに北陸まで足を伸ばすことになった。しかし、これが大正解だった (Kさんに感謝^^;)

金沢公演に出かけるのは、「EAST ASIA」ツアー (1993年4月27日) 以来、実に約20年ぶりのことである。

それ以前の北陸遠征は、さらにその10年前、「蕗く季節に」ツアーの富山公演 (1983年5月9日) であり、これが私が初めて行った中島みゆきのコンサートだった (その時の記憶は、以前、同人誌の記事「海の中の国境を越えて」に少し書いた)

そのせいもあってか、京都から北陸路を辿って彼女のライヴに出かける旅は、(東京や中国、九州への旅とはまた異なる) 特別な感慨を私の中に呼び起こすような気がする。

それは、北陸本線の車窓の風景によるところも大きいのかもしれない。とくに今回は、北陸トンネルを出たとたんに特急サンダーバードの車窓に広がった雪景色に、思わず、北国にやってきたのだ、という旅愁が湧いた。

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さて、会場の本多の森ホールは、1階席のみ (計1707席) の比較的こじんまりとしたホールである。席は1階L列、左ブロックではあるが通路の直後であり、ステージへの見通しのいい良席。

緞帳が上がって「空と君のあいだに」のイントロが始まり、下手から白いドレスの中島みゆきが登場した瞬間、しばらくぶりに全身に電流が走るような衝撃を覚えた。

年内最終ということもあってか、バンドの演奏も気合いが入りまくり、中島みゆきのヴォーカルも絶好調。その緊張感を (彼女もミュージシャンたちも、そして私を含む客席も) 途切れることなく持続したまま、ラストまで全力疾走のまま走り切ったという印象があった。

とりわけ、「過ぎゆく夏」「地上の星」「NIGHT WING」そして「パラダイス・カフェ」といったアップテンポの曲での疾走感が、今も身体の底に快く残っている。素晴らしいコンサートだった。

上述のとおりこじんまりとしたホールのせいもあってか、客席の一体感もとても熱く、アンコールでは「恩知らず」のイントロから「ヘッドライト・テールライト」のエンディングまで、ほとんど総立ちのスタンディング・オベーション。私も、思わず拍手と手拍子に力が入りすぎ、左の掌が内出血したほどだった。

ところで、この日は年内最終であるのみならず土曜日 (しかも3連休の初日) ということもあってか、私のように各地から遠征してきたファンも多かったようだ。MCで中島みゆきが「金沢市民の人~」と呼びかけた時の拍手よりも、「金沢市民じゃない人~」と呼びかけた時の拍手の方が、明らかに多かった (私はもちろん、両隣の席の人も後者だった) 。それだけ、この会場には多くの「コア」なファンが集結していた、ということかもしれない。

ヴァイオリンの歌とリズム

音楽的には――初日の神戸公演のレビューでは、島村英二のドラムについて書いたが――金沢でとくに印象に残ったのは、初参加 (かつメンバー最年少) の石橋尚子のヴァイオリンである。

クラシック音楽、とくにオーケストラでは主役であっても、ポピュラー音楽では必ずしも前面に出ることの多くないこの弦楽器を、中島みゆきと瀬尾一三は近年 (とくに2000年以降)、ツアーや夜会に積極的に起用してきた。最近では、夜会『今晩屋』での牛山玲名の、多彩な音色の変化に富んだしなやかな演奏が記憶に新しい。

ヴァイオリンはいうまでもなく高音部を担当する旋律楽器であり、今回のツアーでも、冒頭の「空と君のあいだに」のイントロの旋律に始まり、いわば「言葉にならない歌」を歌うことによって、中島みゆきのヴォーカル (言葉による歌) をサポートする役割を果たしつづける。「縁」のあの長い間奏で、歌の主旋律を (リズムを引き延ばしながら) ゆったりと奏でるところなど、まさに旋律楽器としてのヴァイオリンの面目躍如というべき聴きどころである。

――しかしそれにとどまらず、ヴァイオリンには実は、(厳密にはこういう言い方は正しくないのかもしれないが) リズム楽器としての側面もある。たとえば、「地上の星」の「名だたるものを追って……」の部分で、鋭い高音のスタッカートによって刻みこまれるリズム。それは、ヴァイオリン以外のいかなる楽器によっても表現しえない、心の奥底に突き刺さる叫びのようだ。

石橋尚子のヴァイオリンは、夜会での牛山玲名のような微妙な音色のニュアンスという点では、やや一歩を譲るかもしれないが――それは夜会とツアーとの性格の違いという要因にもよるものだろう――、その代わりに、ストレートに心に響く豊かな歌と、上記のような鋭いリズムの叫びによって、忘れがたい音楽的記憶を残した。

( (2)につづく )


「「縁会2012~3」金沢公演と大阪公演 (1)」への2件のフィードバック

  1. 些細なことです。初日は10月25日です。大阪の26日と混同されたのかも。「タイトル」から「金沢公演」までの文章中です。
    大阪公演も読んでからコメント書こうと思います。

  2. ナミナミさん、ご指摘ありがとうございました。10月26日→25日に、さっそく修正しておきました。
    ついでに、本文も1段落だけ加筆しました。

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