「『夜会』工場」Vol.1

 

しばらく前からでじなみ・なみふくで予告されていた、今秋からの「夜会ガラコンサート」の正式タイトルと日程・会場が発表され、FC先行予約もスタートした。

「『夜会』工場」Vol.1――

「工場」という言葉の意味といい、二重鍵括弧の使い方といい、”Vol.1″ がシリーズ化を意味するのかどうかという点といい、さまざまに想像をそそられるタイトルではある。

 

しかしまずは、チケット取りの算段をしなければならない。

4都市12公演という公演数の少なさに加え、東京・大阪の会場が、これまで夜会が上演されてきた小ホール (赤坂ACTシアター・シアターbrava!) であること、さらには金・土を多く含む遠征者に優しい(?)日程であること等々、多くの要因から、今回はこれまでにも増して、チケット争奪戦の激しさが予想されるからである。

それはさておき――

オペラやミュージカルでいうところの「ガラコンサート」というのは、典型的なイメージとしては、複数の出演者が、それぞれの得意とする持ち歌――オペラであれば有名なアリア――を歌うオムニバス形式のコンサート、といったものだろう。コンサート形式である以上、個々の演目のストーリーに沿った演出や舞台装置の再現などはなされないのがふつうだ。

しかしながら、ちょっと検索してみたところ、たとえば、2012年に3回目の公演を迎えたという宝塚歌劇の「エリザベート ガラ・コンサート」についての記事には、「回を重ねるごとに衣装が加わり、演技に厚みが加わり、より本公演に近いスタイルに」なってきた、という記述がある。

こうした例をみると、ガラコンサートと本公演との境界は、必ずしも明確ではないのかもしれない。

 

――とはいえ、中島みゆきの夜会の場合、これまで17回の公演の蓄積があり、それらを踏まえての初めてのガラコンサートである以上、「エリザベート ガラ・コンサート」のような特定の演目の再現ではなく、複数の演目から、さまざまな楽曲を選んで歌う、という形式になるのは、まず間違いないだろう。

コンサートツアーで夜会曲が歌われた例はすでに少なくないし、アルバムでの夜会曲のオムニバスは、1995年の「10WINGS」以来、数作がすでにリリースされている。

その上で、「『夜会』工場」と題して、新形式のライヴを上演するからには、そうした既存の作品にはない新しい「何か」を、中島みゆきは呈示してくるはずだ。

何よりも注目されるのは――曲目や共演者もさることながら――個々の楽曲に、どのような新たな演出が――新たな文脈が――与えられるのか、ということである。

個々の楽曲は、いわばこれまでの夜会のさまざまな演目という「完成品」の中に、その構成要素として組み込まれてきた「原料」あるいは「素材」である。それらがかつての文脈から自由に解き放たれることで、どのような新たな生命を吹き込まれ、新たな世界観を提示してくれるのか――

それこそが、「工場」見学の最大の楽しみとなることだろう。


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