TOUR2010 千秋楽あれこれ

2011年1月26日(水)、神戸国際会館こくさいホールで千秋楽を迎えた、中島みゆきTOUR2010 (~2011)。

その内容的な感想は1つ前の記事に書いたが、この記事では、そちらには書ききれなかったいくつかのことを、思いつくままに記しておきたい。

神戸と「歌暦ネット」の思い出

中島みゆきのツアーの神戸公演に出かけるのは、1990年8月18日の Night Wings ツアー神戸文化大ホール以来、実に20年ぶりのことだ。

この20年前の神戸公演は、私にとっていろんな意味で、非常に思い出深いコンサートである。当時、リリースされたばかりのアルバム「夜を往け」を中心とした内容のインパクトもさることながら、その前年から参加していたパソコン通信「歌暦ネット」のメンバーとともに観た最初のライブだったという点で、私にとって記念すべきコンサートとなった。

若い人には説明が必要かもしれないので少し補足しておくと、インターネットが現在のように普及する以前、1980年代後半から1990年代にかけて、全国には無数の個人運営の――当時「草の根BBS」と呼ばれた――パソコン通信ネットワークが存在した。「歌暦ネット」もそのひとつで、中島みゆきファンのネットワークとしては、さきがけ的な存在であったと思う。

それまで約10年間の孤独なみゆきファン生活から脱し、多くの――それも私以上にコアな(^^;)――ファン仲間たちと知り合い、オフラインミーティング (飲み会) で語り合ったり、ともにライブに出かけるようになったことは、私にとってまさに革命的な出来事だった。

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この神戸公演につづき、その直後、8月20,21日の大阪フェスティバルホールにも参戦、さらには8月31日、沖縄市民会館にまでネットの仲間たちと遠征し、千秋楽を迎えた。

このように、遠隔地も含めて、1つのツアーに複数回出かけるという――「追っかけ」の第一歩ともいうべき――経験も、この時が初めてのことである。

この夏は、そんなこんなで、また個人的には大学院生時代最後の夏休みだったこともあり、いろいろな意味で「熱い」夏として、強く記憶に残っている。

実を言えば、このときの Night Wings ツアーのチケットはいずれも自力では取れず、歌暦ネットの仲間の協力で取ってもらったものだった。

しかしそうした実利的(?)メリットにとどまらず、このときに始まるネットの仲間たちとの交流、彼ら彼女たちから受けたさまざまな刺激や触発を抜きにしては、それ以後現在に至るまで約20年間にわたる、中島みゆきファンとしての充実した日々はありえなかっただろう――

昔語りの前置きが長くなってしまった。

その後、パソコン通信からインターネットへの世代交代とともに歌暦ネットは運営を停止したが、その頃の仲間たちの多くとは、今でも mixi などで連絡を取り合っている。TOUR2010の初日、そして今回の千秋楽でも、何人かの懐かしい仲間たちと再会し、また終演後の飲み会で愉しく語り合うことができた。

ホールにて

さて、今回の TOUR2010 千秋楽は、Night Wings ツアーのときの夏とは打って変わり、六甲颪が吹き降ろす冬の神戸である。

考えてみると、関西人でありながら、仕事以外の目的で神戸市街に出かけるのは、ずいぶん久しぶり――そう、あの1995年の大震災以後、実に初めてのことだったと気づいて、われながら驚いた。

JR三ノ宮駅で新快速を降り、17時ごろ神戸国際会館着。

ふだん、公演パンフレット以外のオリジナルグッズ類はあまり買わないのだが、今回は久々のツアー千秋楽ということもあり、その記念にと思って、開場前販売のコーナーへ向かう。

ところが、お目当てのご当地ピンズはすでに売り切れで(;_;)、オリジナルストラップと歌姫国パスポート (スタンプ用) のみを購入した (この記事冒頭の写真)

ちなみに、後から某掲示板で知ったのだが、開場後のロビーのグッズ売り場には、ご当地ピンズがまだあったとのことで、諦めが良すぎた自分を後悔した。(;_;)

17:45開場後、まずは「おたよりコーナー」の受付へ。

「おたよりコーナー」も、これまでは人の投稿を楽しむだけだったのだが、今回はやはりちょっと気が変わって、初めて自ら投稿することにした。私事を晒すようでお恥ずかしいが、おおよそ次のような内容である。

今回のみゆきさんのツアーに来るのは、初日以来、今日の楽日で2回目です。
せっかく関西公演が9回もあるので、できればもう少し来たかったのですが、
1月中旬に息子の中学受験を控えていたので、このスケジュールになりました。

今から3ヶ月前、ちょうど大阪での初日の頃には、彼の成績ではまだまだ第1志望校は
遠い目標だったので、どんな気持ちで今日の楽日を迎えることになるのか、
はっきり言って不安でした。

そして、ちょうど今から10日前に、第1志望校の合格発表。
息子の受験番号を見つけたときのうれしさは、かつての自分の受験の時以上でした。
こんなに晴れやかな気持でみゆきさんのコンサート、それも楽日に来ることができて、
がんばってくれた息子に「ありがとう!!」と言いたい気持ちでいっぱいです。

幸か不幸か、私のこの「おたより」が採用されることはなかったが、後でみゆき本人が読んでくれるかもしれないと思うと、やはり書いてよかったと思い返したりもする。

みゆき本人もMCで語っていたように、「おたよりコーナー」は、かつてのラジオDJ、オールナイト・ニッポンの再現である。あの番組を聴いていた当時、私自身はすでに大学受験を終えてはいたが、読まれる葉書の多くが受験生からのものだったことを思い出す。

あの頃のリスナーの多くも、私と同じように、もはや子どもが受験を迎えるような年齢になっているかと思うと、感慨深いものがある――というのが、上記のような「おたより」を書くことにした理由、というか言い訳である(^^;)。

千秋楽という祝祭

さて、肝心のコンサートの内容についてだが、前の記事にも書いたとおり、1階4列目センターという席で、正面わずか数メートルの舞台上にいる中島みゆきから放射されてくる強烈なエネルギーに圧倒されっぱなしであり、あまり言葉として書けるような冷静な記憶が残っていないというのが正直なところだ。

とはいえ、舞台と客席とを一体となって包みこむ、千秋楽ならではの祝祭的な興奮の盛り上がりは、やはり期待通り、いや期待以上のものだった。

それは、いつものことながら、シリアスな歌唱と強烈なコントラストをなすコミカルなMCについてもまったく同様で、みゆき曰く、「私の表情がシリアスに見えるのは左右両側の席で、正面の席はお笑い席」なのだそうだが、まさに舞台間近のその「お笑い席」で、十二分に「ジェットコースター」の加速度に振り回される感覚を味わった。(^^;)

 

シリアスな側面については――

とりわけ、「Nobody Is Right」での、冒頭の朗読が始まったとたんに全身に電流が走り、金縛りにあったかのように身動きできなくなるほどの緊張感。

そして、「時代」冒頭の透明なア・カペラから、後半のリフレインへの盛り上がりとともにどこまでも高まってゆく、遥かな高みから自らの生と世界とを俯瞰するかのようなめくるめく感覚――

そういえば、「時代」の直前のMCで、「あなたの人生に」と、みゆきが拍手を贈ってくれたとき、初日(新歌舞伎座)の聴衆は、私も含めて、予期しえなかったことへの驚きと気恥ずかしさからか、すぐに彼女への拍手で応えることしかできなかった。

しかし千秋楽では、みゆきの拍手は上記の「時代」冒頭のア・カペラへと切れ目なくつながり、やがてバックバンドがイントロを奏ではじめると、待ち構えていたかのように、客席からゆっくりと拍手が湧き起こった。感動的な瞬間だった。

このときに限らず、拍手や掛け声のタイミングの良さ、そしてアンコールの「悪女」「たかが愛」でのスタンディング・オベーションに至るまでひしひしと感じられた、舞台と客席との熱い一体感は、やはり千秋楽ならではのものだと思う。

みゆき自身もMCで、「千秋楽はコアなファンの方が多いので、なんだか保護者に見守られてるみたいで緊張するんですけど(笑)」と照れ隠し気味に語っていたが、それも、そうした雰囲気を感じ取ってくれてのことだろう。

これからも「コアなファン」のひとりとして、何度でもまた彼女とめぐりあうことができれば、と強く願った千秋楽であった。


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