それぞれの中島みゆき

いつものごとくブログ更新をさぼっている間に、次々と新しい中島みゆき関連ニュースが飛び込んできた。

ニューアルバム『十二単~Singles4』や、DVD/BD『夜会VOL.17 2/2』のリリースももちろん楽しみではあるし、同じく夜会VOL.17の劇場版の公開も近い。そして、予断を許さない新形式のライヴ「夜会工場 Vol.1」の初日も、約3週間後に迫った。

しかしまずは、一昨夜NHK-BSプレミアムで放送された「オール中島みゆきナイト」のことから。

4年前の2009年、同じくNHKのBS2(当時)で放送された「BS熱中夜話」が、多くの「コア」なみゆきファンをゲストに招いたマニアックな内容だったのに比べると、今回は全体に「ライト」層向けという感じかな……と思いながら観ていると、最後に思わぬどんでん返しが来た。

スナック「みゆき」に工藤静香の手紙を届けにきた郵便屋さんが、なんと中島みゆき本人!

思わず凍りつく(?)出演者たちに、ただ一言――

「力うどんは、天かす抜きでお願いします」

この飄々たる衝撃力――というのも変な表現だが――は、いかにも彼女らしい、というほかはない。

ちなみに、力うどんは彼女がコンサートの開演前に取る食事の定番だというエピソードがその少し前に出てきたのだが、その伏線抜きでは、まことに謎な発言にしか聴こえないだろう……

 

それはそれとして、番組の前半で印象に残ったのは、出演者たちや、街頭インタビューを受ける一般の人びとの語る中島みゆき像が、実に多様で「人それぞれ」であることだ。

それは、中島みゆきというアーティストの多面性の反映とみることもできるかもしれない。

しかしより正確にはそれは、ひとりひとりの聴き手にとって――それが「コア」なファンであろうと「ライト」な聴き手であろうと――中島みゆきがつねに自らと「1対1」の関係で向き合うしかない相手になってしまう、ということを意味しているような気が、私にはする。

この「1対1」の関係ということについては、かなり以前に同人誌の記事にも書いたが、私のくだくだしい説明よりも、中島みゆき自身が以前にインタビューで語っていた次のような言葉の方がはるかに、その意味をシンプルかつ的確に伝えてくれるだろう――

たとえ3000人のコンサートホールで歌っているときでも、1対3000じゃないんですよ。1対1が3000あるだけです。

――つまり、彼女の1枚のCDを100万人の人が聴いたとすれば、1対1が100万あるだけ、なのだ。

 

そうした意味で「1対1」で彼女と向き合ってきたファンの中には、いわゆる一般人だけでなく、著名人やミュージシャンも当然存在する。

10月30日にアルバム『W FACE』をリリースし、その収録曲「Winter Song」に中島みゆきが歌詞を提供したことで話題になった織田哲郎も、まさしくそうした「ファン」の一人であったようだ。

ラジオ番組のインタビューでの、「織田さんが、中島みゆきさんを長年、リスペクトしていると伺ったんですが……」という問いに対して、

リスペクトじゃないです。単に、ファンなんです

――この答は、とても格好よく、すがすがしい。

このインタビューで彼が語っていたように、かつて、いわゆるバブル前夜の頃、中島みゆきといえば「暗い」歌の代名詞であり、一般のファンはもちろん、ましてやミュージシャンにとって、彼女のファンであることを公言することがはばかられるような時代があったことは、最近の若いファンの方々には理解しがたいことかもしれない。

私自身、そうした「暗黒時代」をくぐり抜けてきたファンの一人として、「暗いのが何が悪いんだ、と思っていた」という彼の言葉には、個人的に思わず共感させられてしまう。

「Winter Song」は、そのたたみかけるようなアップテンポの曲調と、いかにも彼女らしい歌詞とのコンビネーションが魅力的だ。

Winter Song 冬は何か始まる
底の底まで冷えた心 はずみのように熱をもつ

――そんな「始まり」の季節としての冬への期待を、私もやはりひとりの中島みゆきファンとして、共有したくなる。


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